
型吹唐草文ガラス六角盃
江戸中期-後期
口径6.2cm 高6cm
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びいどろ脚付盃につづいて、江戸時代のガラス酒器をもう一点ご紹介します。
こちらは脚付盃のように宙吹きではなく、型に吹き込んで成形された六角盃。
高鉛のガラス地は薄緑色を帯びてゆらゆらと波打ち、更紗文のような唐草文様をぼんやりと浮かび上がらせています。その型膚のぼこぼこした手触り、鉛を含んで重たいのに可憐な陰影を生む薄手な姿は、この時期の型吹きびいどろしか持ち得ない和ガラスの情緒に富むものです。
宙吹きびいどろよりも比較的に薄くて儚い、今にもこわれてしまいそうな江戸時代の型吹きガラスには、漂う花のような心を打つものを感じます。
この六角盃は数年前に手に入れたもの。
口縁に一つ欠けがありましたが、繊細過ぎるため修繕に戸惑いながら長く手許に置いていました。
と言うのも、この口縁の造りは型から吹き放した際に生じる跡を研磨しており、数ミリのガラス器壁の再現修復は難しいと考えていたのです。また、この手の薄い型吹きではやむを得ない僅かな疵ともいえます。
それを矢代さんは当時の口縁部のままに金継ぎによって再現修繕してくださいました。厚みと曲線、角度から先端の鋭さまで。目をつむって縁を一周指でなぞっても分からないほど。欠けていてすこし辛かった印象も今はもう無くなりました。
古器の素材や造形を熟知した者が辿り着く見事な美しい修繕といえます。漂う花のような可憐さも残してくれたままに。
