「葡萄酒コップと硝子の懐石」
2022年12月10日(土) - 20日(火)
12時 〜 17時
作家在廊日:12月10日(土)
会期中のお休み:12月14日(水)
和製ガラスの頂点といわれる江戸中期から後期の「びいどろ」と呼ばれたガラス器。
ヨーロッパのガラス写しへの試みから発展し、四季の植物を意匠化したり、
鉛を含有した艶やかな色彩と表情は、当時の日本でしか見ることのできない情緒あるガラスの器です。
小澄正雄さんは、今では失われた江戸期のびいどろへ焦点をあて、研究と製作を続けられています。
それは、伝統工芸とも、生活工芸といった括りの現代の食卓に寄り添った器ともいえず、
また、個性を追求する美術的な創造とも異なる、ものづくりへの姿勢がうかがえます。
びいどろに倣っているのは、器の造形や色彩という以上に、ほんとうは和ガラスのはかなさ、脆さ、
江戸の日本的な感性に再び触れようとしているためだと思えてなりません。
だから、小澄さんのガラスには、なにか漂うように心を得たものがあります。
写しは懐古にとどまらず、過去を新たに見つめる視点と創作であり、
氏の製作に対する飽くなき探求心は、道具屋の仕事にも通ずるところがあり、魅かれているのかもしれません。
本展では「葡萄酒コップ」と、勝手に命名させてもらったガラス器が初披露されます。
かつて、日本でコップとワイングラスの境界が曖昧だった時代、脚(ステム)を備えたガラス器も、
そうでないものも、総称して「コップ」の名で呼ばれて、親しまれていたそうです。
そうしたガラス酒器に思いを馳せて、「葡萄酒コップ」と名づけて、
びいどろの情緒を宿した和のワイングラスを小澄さんへ依頼しました。
定番である型吹きの向付や皿に鉢など、硝子の懐石とともに、年末年始を彩る美しいガラスの飲食器が揃います。
本年最後となる展示会です、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。