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聖母子像

聖母子像
フランス 1700年代中期-後期頃 / 木彫に彩色
像高93cm

 

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その立ち姿を見つけた瞬間、目が釘付けに。ディーラーによると1700年代中期から後期、フランスの地方で作られた民衆芸術的な聖母子像ではないかと。自分の中での欧州の木彫人形像に対する、範疇を超える突然の出会いに、興奮状態のまま茫然としてしまった。

像高は93cmと大きく、木彫りで上半身の概形を作り、彩色の施された彫像。静けさを湛えた聖母マリアの優美な顔立ち、かつての彩色が微かに残された木肌は滑らかで、抱いた幼児キリストへと穏やかに向けられたまなざし。淡いブルーの瞳、紅い唇。昔はさぞ色鮮やかな聖母だったことでしょう。

この造形は、通称cage dollと呼称される下半身を鳥籠のような円柱状とし、板を縦に組んだ人形彫刻の部類ですが、背板が備えてあり、一般的なそれらとは少し異なっているようにも感じました。ただ、この像もcage dollに分類するならば、一つ古い時期であり初源の造形といえそうです。壁面に安置され、衣装を纏い、小村の教会などに祭られたのでしょう。

村の清らかな乙女を思わす端正な彫りの顔。幼児キリストの手脚も愛らしく、子どもの特徴をとらえた見事な彫りです。それに対して、本来は露出している部分ではない、衣服を着せていた腰や胸の彫りは荒々しく、木枠の削りも豪快。けれども、そのアンバランスさこそが、この彫像の民衆芸術的な魅力を増しています。

また、この手の木枠彫像で単体のサントスは見る機会は多いですが、聖母子像はなかなか見かけません。手に抱えた幼児キリストもオリジナルのままでした。簡素に接合しただけでありながらも、二人がはなればなれにならず揃っているのは稀な、有難いことでした。

この名もなき職人の精神と技に敬服の念を抱く。偶然にも発見できたことは、今回一番の成果となりそうです。短期間の買付としては幸運な巡り合わせだったでしょう。
故郷をはなれ異国の地でも、その手仕事の価値を最大限に伝え、後世に残せるよう努めて参ります。

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醸造会館の古びた室内に置いてみると、風化した杉床や埃を被った漆喰壁に自然と溶け込み、フランスで見つけた時や眺めていた場所よりも不思議と居心地が良さそうに見えたのです。また、磨り硝子越しの光のもとではヨーロッパ生まれの顔ながら、陰影も影響してか古仏のような顔立ちにも感じられました。

日本へ無事に到着したら早く整えてあげたかったのは、聖母マリアの左手に乗る幼児キリストが、やや不安定で坐りづらそうだったこと。ホゾの継ぎを修繕すると、お互いに見つめ合う穏やかな姿を取り戻しました。

見た瞬時に釘付けとなり、大きな衝撃を受けたもの。
立派で稀少な宗教彫刻像ではなく、鄙びた民衆芸術的で素朴な人形像ですが、やっと自分に合う、心の安らぐ像という一つの存在と巡りあえた気持ちになりました。

丁寧な彫りの顔や手に対して、荒々しい削りの胴体。写実性と象徴性がほどよく融合した姿には意図していない暗示があり、さまざまなことを連想させてくれます。彩色の剥がれた白さや枯れた木肌もとても静か。歳月の染み込みを感じられて落ち着きます。

あてもない物探しですが、その偶然の発見が感性を強く揺さぶる。過去の知られざる手仕事を探究しながら、お伝えさせていただけることはこの上ない喜びです。楽しみに待っていてくださるお客様に心より感謝いたします。

 

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